女性の円形脱毛症＝ストレスとは限らない！円形脱毛症の原因を理解し正しい対処を！-美髪ラボ

「円形脱毛症」というと、ストレスの代名詞のように思われていますよね。
医学界でもずっとそのように捉えていたようですが、2000年頃から研究が進み、現在ではストレスは一つの誘因に過ぎない、というのが有力な説になっています。

ここでは女性の円形脱毛症について、詳しく解説します。
誰にでも起こる可能性があるので、正しく対処できるようにしましょう。

突然、大量の抜け毛が！？

ある朝突然、枕にごそっと髪がついていた、ブラッシングすると数十本の毛が抜けた、といった症状が起こったら、円形脱毛症の可能性があります。
全く痛みを伴わず髪が抜けていくので、後頭部や頭頂部にこの脱毛症が起こった場合、本人は全く気付かず、人に指摘されることもあります。

円形脱毛症は誰でも発症する可能性があります

現在のところ、円形脱毛症に対する研究は半ばで、わかっていないことがまだ多くあります。
しかし、ストレスや疲労などが誘因の一つとされていることから、誰でも発症する可能性があります。
また、幼児で発症する場合もあることから遺伝的要素の可能性も指摘されており、実際に家族に円形脱毛症発症者がいる場合、子供の約2割が発症するとされています。

円形脱毛症の確率は約1～2％とされていますが、ある程度の誘因はわかっているものの未知の領域も多いため、健康に自信がある人でも突然髪が大量に抜けることが起こるかもしれません。

円形脱毛症に正しく対処するには原因の理解が大事

円形脱毛症は単なる抜け毛ではなく、病気の一種です。
現在はまだ対処療法になってしまいますが、効果の出る治療がありますし、一部の病院では脱毛外来をもうけ、専門的な治療を受けることもできます。

日本皮膚科学会での調査では、発症後1年以内の1か所だけの円形脱毛の場合、80％が1年以内に治癒したとの報告もあります。
その反面、放置して悪化した場合や他の疾患がある場合、治癒率が低くなってしまいますし、治療に全身性の副作用が伴うこともあります。

いたずらに悩むのではなく、一日も早く診察を受け、併せて円形脱毛症に対する正しい知識を持ち、原因を理解しましょう。

円形脱毛症の種類と症状

円形脱毛症にはいくつかの種類があります。
比較的治りやすいものから、治療に数年かかるタイプや治癒が困難なタイプもあります。
ここでは、日本皮膚科学会のガイドラインに沿って分類したものをご紹介します。

円形脱毛症の種類と症状や特徴について

Ⅰ．通常型円形脱毛症

Ⅰー①　単発型
円形脱毛症の中では最も多いタイプで、突然円形か楕円形の形に髪が抜けます。
サイズは10円玉～500円玉程度のことが多く、場所は不特定で、髪のほかまゆ毛や体毛が円形脱毛症になる場合もあります。

子供から老人まで男女問わず起こりますが、最も治りやすく、「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2010」によると、日本での調査では約80％が1年以内に治癒しています。
気づかないうちに発症し、そのまま治ってしまうこともあります。

Ⅰー②　多発型
円形脱毛が2か所以上に起こる場合を多発型といいます。
単発型が数か所に出るという位置づけになりますが、単発型に比べると治療に時間がかかり、半年から2年前後かかる例が多いとされています。

単発型の経験がありその時には治ったからと放置していると、複数の脱毛箇所が結合し拡大する「多発融合型円形脱毛症」になってしまう場合があり、これは治療が困難とされています。

Ⅱ．全頭脱毛症

多発型が悪化して多発融合型になり、さらに頭部全体に広がって髪の毛がすべて抜けてしまう脱毛症です。
欧米の報告によると、単発型円形脱毛症患者の15～25％が全頭脱毛症や次に挙げる汎発型脱毛症に移行し、回復率は10％以下と大変低くなります。
また、15歳以下の場合、全頭型の治癒率は34％との報告があります。

Ⅲ．汎発（ばんぱつ）型脱毛症（全身型脱毛症）

全頭脱毛症がさらに悪化すると、髪だけでなくまゆ毛、まつ毛、ひげ、体毛などすべての毛が抜けてしまいます。

「悪性円形脱毛症」とも呼ばれ、一時的に良くなっても再発することが多く、産毛すら生えない状態になります。
15歳以下の場合、汎発型の治癒率は38％との報告があります。

Ⅳ．蛇行型脱毛症

多発型の一種で、後頭部や側頭部の生え際に起こる細長いタイプの脱毛症です。
しかし、通常型円形脱毛症と違い、治癒率が低いという特徴があります。
主に子供に見られる症状ですが、完全に治癒したのが13％、軽快が25％と低くなっています。

有効な治療とされるのはステロイドの内服ですが、子供にとって副作用が大きい上に服用を止めると再発することが多いため、なかなか治療が難しいとされています。

コレってもしかして！？円形脱毛症の初期症状

円形脱毛症には全く初期症状がないことも多いのですが、以下のことが起こった場合、円形脱毛症の初期かもしれません。

・頭部の一部の地肌が透けて見える
・いつもより枕に多く抜け毛がついている
・シャンプーやブラッシングの際ごそっと抜ける
・ある部分の髪を引っ張ると、痛みなく簡単に抜ける
・抜け毛の毛根部が丸くなく、細くとがっている
・爪にデコボコができたり横線が入っている

最後の爪に関しては、髪と爪が同じケラチンタンパク質から出来ていることや、身体にとって髪と爪は同じ末端組織のため、髪に異常が起きると爪にも何かしら異常が起きている場合が多いからです。

思い当たる点があったら鏡で頭部をくまなくチェックし、できることなら他の人にも見てもらいましょう。

円形脱毛症を引き起こす5つの原因

円形脱毛症には色々な種類がありますが、原因に違いはないとされています。
現在のところ、円形脱毛症の原因あるいは誘因とされている代表的なものが5つあります。
これらの原因・誘因があるから必ずしも円形脱毛症になる訳ではなく、確率的に多いということです。

円形脱毛症の原因①自己免疫疾患

近年、最も有力な原因とされているのが、自己免疫疾患です。
何らかの誘因によって体内のリンパ球が髪の毛の毛根部を包んでいる毛包を異物と見なして攻撃し、毛根がダメージを受けて髪が抜けてしまうというものです。
髪や毛根部自体が健康な場合にも起こります。

この原因説は、自己免疫性疾患を患う人に起こりやすいことから可能性が高いと考えられており、橋本病などの甲状腺疾患患者の8％、尋常性白斑患者の4％、その他関節リウマチや筋無力症などの患者も発症しやすいと考えられています。

円形脱毛症の原因②アトピー・アレルギー

アトピー性疾患を持つ患者に円形脱毛症が多いことは、以前から知られていました。
日本皮膚科学会の調査によると、200例のうち患者あるいは家族がアトピー素因があるのが54％、本人にアトピー素因があるものが41％、アトピー性皮膚炎の場合は23％という高い結果が出ています。

さらに、アトピー素因があるほど重症化しやすいという結果も出ており、リンパ球の毛包部への攻撃が強くなることがわかっています。

ただし、アトピー素因がどのように円形脱毛症の発症の引き金になるのかは、まだわかっていません。

円形脱毛症の原因③精神的なストレス

以前からよくいわれていたストレスですが、現在のところ医学的な根拠はないとされています。
というのは、精神的ストレスというのは非常にあいまいな概念で、科学的に評価するのが困難だからです。
とはいえ、研究によると患者31名中74％が精神疾患を患った経験があることから、関連性がないとはいえない、という考えもあります。

免疫はリンパ球の働きによるものですが、リンパ球を調節しているのが自律神経です。
そのため、ストレスによって自律神経が乱れるとリンパ球の働きがおかしくなり、攻撃対象を見誤って自身の毛包にダメージを与えてしまうのではないか、という仮説があります。

また、白血球には顆粒球が約6割、リンパ球が約4割含まれていますが、ストレスによって交感神経が活発になると顆粒球が増え、リンパ球が減ります。
顆粒球はウイルスや細菌を活性酸素で攻撃する働きがあり、活性酸素が増えすぎると健康な細胞まで傷つけてしまうことから、髪の毛母細胞にダメージを与えてしまうのではないか、という仮説もあります。

円形脱毛症の原因④遺伝的な要因

中国や欧米での調査によると、家族が円形脱毛症を発症した経験があると、発症していない場合に比べ高くなることがわかっています。
特に遺伝子が全く同じ一卵性双生児の場合55％、二卵性双生児の場合0％だったという結果も出ています。

円形脱毛症の原因⑤出産による女性ホルモンの減少

女性ホルモンの急激な減少も、円形脱毛症の誘因になるとされています。
女性ホルモンには髪の成長を助け寿命を伸ばす働きがあります。
妊娠中はホルモン分泌量が非常に増えるため抜け毛が減るのですが、出産後分泌量が減ると、寿命を過ぎても留まっていた髪が抜けていきます。

これ自体は正常なことなのですが、出産後のストレスによってさらに女性ホルモンの分泌量が減ってしまうと、円形脱毛症を引き起こすのではないかと考えられています。

また、更年期に差し掛かると女性ホルモンの分泌がほとんどなくなることから、更年期障害の一環として円形脱毛症になる場合があります。

さらに、2000年頃からしばしば発見されている女性の脱毛症にADTAFS（Acute diffuse and total alopecia of the female scalp）というものがあります。
女性の急性びまん性脱毛症のことで、円形脱毛症が急速に悪化し、数か月で全頭脱毛症になるものの、その後数か月でまた髪が生えてくるというものです。

抜け出すとどんな治療をしても脱毛を防ぐことはできず、生え出すとほとんど何もしなくてもぐんぐん成長していきます。

東北大学が2002年に9人の女性の治療に当たったことから研究発表を行なっており、9人中8人はほぼ何も治療しなくても、6か月以内に髪が十分生えてきたということです。
原因は不明ながら女性に起こっていることから、女性ホルモンが関係しているのではないかという説があります。

円形脱毛症への対処法

円形脱毛症ははっきりした原因がまだわかっていないため、明確な予防法もありません。
しかし自己免疫疾患であるというのが定説になりつつあり、ストレスがその誘因になる可能性が高いこともわかっています。
ストレスを溜めず、健康的な生活を送ることが、円形脱毛症への正しい取り組み方といえるでしょう。

規則正しい生活を送り充分な栄養補給を心掛けて

いらいらしたり精神状態が不安定な時に、何か食べたくなるということはありませんか？
これは、物を食べることで副交感神経が活発になり、心身がリラックスすることを脳や身体が知っているからです。

また、同じ時間に食事をすると体内時計が正常に働くため、交感神経と副交感神経のバランスが良くなり、精神が安定します。

このことから、身体の欲求を無視したダイエットや、不規則な時間に食事を摂ることはストレスを増大させてしまいますから、円形脱毛症の時には絶対に避けなければいけません。

また、栄養バランスを考えた食事を摂ることで内臓の機能がアップし免疫力がつくため、リンパ球が暴走する自己免疫疾患にもなりにくくなります。
しかも、副交感神経が働くようになると白血球の顆粒球が増えることがなくなり、活性酸素も発生しにくくなります。

活性酸素は毛包や毛母細胞だけでなく、全身の細胞を攻撃して老化させてしまうため、円形脱毛症にはならなくても薄毛や抜け毛を悪化させてしまいます。
そんなことにならないよう、規則正しい生活と充分な栄養補給を心がけましょう。

また、脱毛は血行不良が原因となることが多いため、横浜労災病院皮膚科の齊藤典充氏は頭皮マッサージを勧めています。
特に頭皮が張って硬くなっている場合、栄養が届きにくくなっているので、頭皮を上に持ち上げたり、上下左右に動かしたりすることで血行を良くし、頭皮の柔軟性を取り戻しましょう。

円形脱毛症であることを受け入れよう

特に女性にとって、円形脱毛症であることはとてもショックです。
しかし、あまりにも悲観的になるとそれがストレスとなり、さらに悪化してしまうこともありますので、つらくても円形脱毛症としっかり向き合いましょう。

ウィッグや帽子、スカーフなどでおしゃれを楽しんだり、髪のことなど気にしない犬や猫、鳥などを飼ったりしてストレスを癒してもらうという方法もあります。
一回だけの大切な人生を髪の毛の治療やストレスだけに使うのではなく、楽しいこと、嬉しいことを少しずつでもやっていきましょう。

症状が酷い場合は円形脱毛症かもと思ったら、すぐに早めに専門医に相談を

円形脱毛症は病気です。
現在10種類以上の治療方法がありますが、早期であればあるほど治療法の選択肢があり、治癒する確率も高くなります。

たとえ1円玉程度の円形脱毛症でも、放っておくともっと大きくなったりほかの部分にも出来たりするかもしれません。
あるいは、自分では見つけられない部分にもあるかもしれません。

単発型の場合、約6割は何もしなくても自然に治るとされていますが、自分がその6割に入るかどうかはわかりませんよね。
また、発症してから時間が経てば経つほど治りにくくなる傾向があります。
そうなる前に、円形脱毛症に気づいたら早めに皮膚科で診察を受けることをお勧めします。

円形脱毛症の研究は日本だけでなく欧米でも進められており、新しい治療法が次々に出てきています。
日常生活の改善をすることはもちろんですが、病院も積極的に利用しましょう。

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